ルポライター(1)
『我々の権利を侵害する奴らを許すな!』 『凶暴で野蛮な奴らに正義の裁きを!』 階下の路上から繰り返し響いてくるシュプレヒコール。 この国、いや、国だったものに古くから伝わる言葉ではなく、外国の公用語で叫ばれるものが秘める怒りの熱量は相当なものだ。 しばらく眺めていると、デモ隊の前方から多人数の集団がやってきた。 腕づくでデモを止め、排除しようとでもいうのだろうか。 やがて小競り合いが始まり、怒号が響き始めた。 (愚かな事を・・・) 心の中でひとりごちたところで、警官隊が到着した。 ほどなくして、デモ隊を排除しようとした集団は残らず捕縛され、複数の護送車で強制労役所のある郊外へと連行されて行った。 メディアを悪用して世界各地に不和と混乱をもたらし、巻き起こった戦争を賭け事や取引の道具に変え、高みの見物を決め込んでいた現代のソドムとゴモラは、図らずも天災によって滅びの道をたどる事となってしまった。 先に独立を宣言していた旧都は準国家格の都市として存続を許されたが、他の多くの国土はいまや世界連盟の共同統治領とされている。 地域によっては、直接統治する国家以外の人間の権利が制限される場合もあるが、人として生活するための権利は最低限保証されている。 だが、かつてこの国だったものに住んでいた人間には、もはや人としての権利は存在しない。 むしろ、人の権利を金と娯楽に変えていた最悪な連中への措置としては、人権の剥奪など程度が軽い温情レベルと言えるだろう。 『さて、そろそろ行くか』 騒ぎが落ち着いたのを見計らって、私のクライアントがアポイントを取ってくれたIT技術者の元に向かうことにした。 過去の栄光に胡坐をかき、技術革新の努力を放棄した愚かな怠け者どもに、世界転覆を狙えるほどの情報操作を行えるメディア兵器を生み出せるとは到底思えない。 実は、この国がITに関して特異点のような高レベル技術を保有していたというなら、杞憂という事で済む。 その技術が現存しているのかいないのか、あるなら世界連盟の管理下にあるのかを確かめればよい。 しかし、この技術が世界連盟を構成するいずれかの国家がもたらしたものなら、再び別の国で同じ事が引き起こされるだろう。 そうならば、どの国がメディア兵器を開発し、健全な...