ファイプロリターンズ - 概要
ファイプロ・リターンズ - ゲーム概要
要約
PlayStation2でリリースされた2作目で、やや不評だった前作をブラッシュアップした作品にあたります。
レスラーサイズやパーツレイヤーシステムの改良といった未完成部分の最適化のほか、アナログスティックを使ったショートカットなどゲームハードの特性を活かしたシステムになるよう改良が進められています。
また、サイドモードで個性を出していた過去作の流れを断ち切り、「マッチメイクモード」という団体経営風のシーズンマッチモード以外はプロレスマッチとエディット関連のモードしかないシンプルな構成となりました。
複数のモードをクリアして技やエディットポイントを開放していく要素もなくなり、はじめからすべてのプロレスマッチやエディットを楽しめたのも、純粋にゲームを楽しみたい層からは好評だったようです。
この作品ののち、終了なのか休眠中なのかわからない「静寂の時代」が10年以上続いてもファンの熱が冷めなかったのは、この作品が長く遊ぶに足るだけの完成度を誇っていたからだと考えられます。
ブラッシュアップ
主な改良点としては、前作「ファイヤープロレスリングZ」で最初に問題になったレスラーサイズです。
これは過去作で行われたSEGAハードからPlayStation系ハードへの移植時にも問題になっていたため真っ先に考慮されるべきでしたが、結局は手直しなしでリリースされた結果、シリーズ最終作が受け入れられずこの作品のリリースにつながったのでした。
ベタ移植されたという証拠は? と疑問に思われるでしょうが、これはセーブファイルが過去作(ファイプロD)で使われていたブロック分割方式になっていた事から明らかでした。
レイヤーシステムの改良は、なぜか前作にはなかった「顔のレイヤーパーツ追加」がメインです。
「顔のエディット」は動画配信サイトなどで扱われるキャラクリエイト系ゲーム配信でも取り扱われるほど重要なものですが、なぜか前作はレイヤー対応されず、旧来のパーツセレクトとカラー設定で脳内補完するシステムとなっていました。
このレイヤー対応により髪型変更やマスクマンの再現などができるようになり、エディットのバリエーションがかなり増えることとなりました。
既存要素の改良
既存の要素にもいろいろな追加や改良がありました。
まずレスラーの技では、「対角線中央攻撃」の追加です。
これはリング中央付近で動きを止めた相手に対し、コーナーポストから走りこんで攻撃するというもので、当時のトップレスラーがテレビ中継で何度もフィニッシュにつなげるシーンが流れたことからファンの間で浸透していったムーブです。
この頃はまだ説得力のある技が少なく、ゲームでも特定レスラー専用に近いものとなっていましたが、バリエーションが広がる余地を感じさせるものでした。
また、タッグマッチ用コーナーダウン技として「対角線ハンマースルーからの連続串刺し攻撃」が追加されました。
これも当時のプロレスマッチで頻繁にみられるようになったもので、作成したレスラーに似合わない大技をコーナー技に設定する必要がなくなったのもメリットと言えます。
このほか、海外で良く行われていたケージマッチで見られた金網上部からのダイブ技が追加されたり、ロープ走り技およびカウンター技に大技相当の装備欄が追加されるなど、さまざまな改良がありました。
ロジックの最適化
レスラーロジックにも、動作面の改良につながる追加や変更がありました。
大きな点としては、「優先行動」という条件分岐機能の追加です。
「優先行動」は、「必殺技で相手がダウン>フォールにいく」「特定のつなぎ技で相手がダウン>特定のダウン技を毎回出す」といった、実際の試合で良く行われる流れを自動的に行うようにするものです。
これまでゲームではプレイヤーが操作しないと再現できませんでしたが、「トリガー技」と「次の行動」を指定する事により、必殺技後に必ずダウン技(フォール)を行う、といった行動がコンピューター戦でも取れるようになりました。
まだ自由度が低く、設定数も少なかったことからレスラーの多彩な動きを再現する所までには至りませんでしたが、大技からのフォール勝ちや繋ぎ技の連携が手軽に行えるようになり、試合観戦でもある程度楽しめるようになっています。
また、プロレスではつきものの「受け身」の確率設定が追加されたのも今作です。
受け身はプロレスラーのタフさと派手さを魅せる技術として昇華されたものですが、それまでは自動受け身機能しかなく、しかも高頻度で発生するためゲームのテンポにも影響していました。
この確率を調整できるようになったため、相手の技を適度に受けつつも勝利を収める、というプロレスらしい展開がコンピューター同士の対戦でも期待できるようになりました。
時流の踏襲やユーザー意見の反映
このほかにも細かい点で改良や追加が行われていました。
目立ったところでいえば「軍団」の追加です。
軍団はいわゆるチーム編成機能で、チームごとに「属性」を設定できるのがポイントです。
プロレスでは善玉(ベビー)と悪玉(ヒール)の抗争や共闘といった話題がエンターテイメント性を生み出す要素となっています。
これまでの作品ではレスラーのスタイルをヒール系に設定することで実現していましたが、この作品が出たころから善玉と悪玉の入れ替わりが激しくなり、レスラー単位での指定が難しくなっていました。
この「軍団」機能の登場によりレスラー移籍で属性変更ができるようになったため、レスラーデータを変更する手間がなくなりました。
「アナログスティックのショートカット機能」はおまけ機能で、メニューを開いて項目を選ぶ操作をスティック操作で代用できるものでした。
操作割り当ては固定されていて変更できませんが、ロゴデザインなど煩雑なモードもあったため一部の画面では非常に有用な機能でした。
ファン向けの要素
旧来のファンに向けた要素もいくつかありました。
たとえば、ゲーム内で使用されているBGMが歴代のファイプロ作品で使われていたもののアレンジバージョンになっている、1組限定ですがオープニングデモマッチにユーザーが指定した対戦カードを指定できる、などです。
不本意なままの作品終了を覆し、さらに「次」を感じさせる出来になったこの作品は、本来なら存在しなかったはずの次につながる原動力となったのでした。
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