ファイプロ (携帯ハード版) - 概要

携帯ゲーム機向けファイヤープロレスリング

◆概要◆

元々は対戦型のプロレスゲームとしてリリースされていた「ファイヤープロレスリング」シリーズ。
新たな「箱舟」となるべく、活躍の場を携帯ゲーム機市場にも求めました。

折しもその時期は、ゲームを生み出したゲーム販売会社が開発販売を終了し、開発側もユーザー側も「次」を模索していたタイミングでした。
当時はまだプロレスもプロレスゲームも人気にかげりが見え始めたもののまだ勢いがあった時代。
商機を逃すまいと、様々な形でのリリースを模索されていたものと思われます。

新たな活躍の場は、当時の任天堂が誇る主力携帯ゲーム機「ゲームボーイアドバンス」、モノクロながらポテンシャルに期待されていたバンダイ(当時)の携帯ゲーム機「ワンダースワン」、そしてi-mode対応携帯電話(今でいうガラケー)でした。
「どこでも遊べる」という強みを持つ端末でのリリースはファイプロの未来につながる一大チャレンジでしたが、不安定な情勢での開発&リリースとなったため、その完成度はいまいちと言わざるを得ないものとなってしまいました。
結局、据え置きハード版「ファイヤープロレスリングD」が最も成功した作品となり、携帯機でのリリースはそのまま終焉を迎えることとなったのです。

しかし、新作の話や噂が出るたびに携帯ゲーム機版にしかないモードや機能の名が挙がることもめずらしくなかったため、当時の制作現場のアイディアや熱意はすばらしかったものと考えられます

◆取扱作品一覧◆

◆作品別概要◆

・ファイヤープロレスリング for WonderSwan

時代の荒波に飲まれた「ワンダースワン」と「ヒューマン」。
この2つが輝き続ければ一時代を築いたかもしれない作品が、この「for WonderSwan」です。

当時「ワンダースワン」は任天堂のファミコンやスーパーファミコンでリリースされたゲームの移植先として注目されており、ファイプロもその流れに乗ってスーパーファミコンの「スーパーファイプロX」の発展作品をリリースする予定だったようです。
しかし制作販売元のヒューマンがゲームから撤退した事により、加賀テック(当時・旧ナグザット)が制作販売を引き継いでリリースされる事となりました。
このような経緯があるものの、ファイプロシリーズのIPはもうひとつの継承先である「スパイク(現・スパイクチュンソフト)」が中心となったため、正式なシリーズ作品とはされていません。

ゲームは前述のとおり「スーパーファイプロX」がベースとなっており、システムの大半が共通しています。
しかし2作品の間に出された「ファイプロS」「ファイプロG」の要素がいくつか追加されており、特に目立つのが手首部分をはじめとするパーツエディットの強化と、技の追加です。
このおかげで過去作品で作成したエディットレスラーを移植する事が可能で、どこでも気軽に遊ぶことができました。
また、追加モードとして観衆の求める試合を組んで規定された人気度を集めていく「マスターオブリング」があり、後の作品にも形を変えて搭載されるなどプロレスらしい要素だったようです。

こう聞くと魅力的に感じますが、ゲーム画面はモノクロで、本体が通信機能に対応しているのに1人プレイ限定と、ファイプロの良さをやや失っていました。
後に性能の良い後継機「ワンダースワンクリスタル」がリリースされたため、シリーズが続いていればもしかすると「次」があったかもしれませんが、結局は引き継いだ会社も「その後」が思わしくなく、そのまま消えていくこととなりました。

ちなみにご本人も明かしてらっしゃいますが、この作品の開発責任者が「Fire Pro Wrestling World」のともぞう監督こと松本朋幸氏で、(形はどうあれ)ファイプロが現代に残った功績者の一人です。

・ファイヤープロレスリングA

シリーズ8作目にあたる作品で、ファイプロの原点とされるゲームボーイの「プロレス」以来の任天堂携帯ゲーム機版、しかもゲームボーイアドバンス本体と同時に発売されたいわゆる「ローンチタイトル」です。

ゲームとしてはヒューマンでリリースされた「ファイプロG」をデチューンした移植版に当たり、制限こそ多いものの、据え置きハード版と同じような感覚でエディットや試合などができました。
特に基本システムが最新作と共通していたのは大きなメリットで、据え置きハード版をプレイしていた人がすんなりと入っていけたのは非常に大きかったと考えられます。

その反面、ハードの操作系がゲームボーイとスーパーファミコンの中間で、装備技欄を減らさないと対応できなかったことから当時のプロレスで人気のひとつだった「技の多彩さ」が再現できず、操作しても観戦してもイマイチ感が漂っていました。
またドットイメージがところどころ破綻しており、パーツの一部が欠けて下地のパーツカラーが見える、別のドットカラーが混入する、などいわゆる「ツメの甘さ」が目立った作品でもありました。

この問題点は続編でも解消できず、もう少し耐えれば「ニンテンドーDS」という非常に大きい戦場が待っていただけに、この「携帯ゲーム機でファイプロは難しい」という残念な認識を開発・ユーザー双方に与えた影響は非常に大きかったと言えます。

・ファイナルファイヤープロレスリング~夢の団体経営~

シリーズ9作目で携帯ゲーム機向けからの撤退作となった、「ファイナル」が文字通りとなった作品です。

ゲームの基本システムは前作「ファイプロA」と同じで、多少ブラッシュアップされた程度の改良作となっています。
前作にあった問題点もそのまま引き継がれてしまっており、ゲーム単体としてみると決して出来が良い物とは言えませんでした。
それでもこの作品がシリーズの中でも有名な作品のひとつとなっているのは、この作品で初登場したサイドモード「マネジメントオブリングモード」の影響が非常に大きいと言えます。

「マネジメントオブリングモード」はいわゆる団体経営シミュレーションです。
プレイヤーは旗揚げ直後の団体オーナーとなり、レスラーのスカウト、会社設備の拡充、マッチメイクといったマネジメント業務をしながらトップ団体を目指していきます。
プレイ中には現実のプロレス界さながらのリング乱入や選手負傷による離脱、造反劇や電撃参戦など、さまざまな「らしい」イベントが展開されます。
この妙な生々しさと、いわゆる「ぼく・わたしのかんがえたさいきょうだんたい」が作れる(かもしれない)やり込み要素につながる奥深さが、当時のプロレスゲームになかった要素として広く受け入れられたと言えます。
レトロゲームに抵抗がないなら、一度プレイしてみてはいかがでしょうか。

このサイドモードはファンの「搭載してほしいモード」上位に位置するほど人気で、追加コンテンツに対応したFire Pro Wrestling Worldで「ファイヤープロモーター」という名で再登場を果たしました。
それだけに、この路線を突き詰めて通信対戦や通信交換などの要素とつなげれば、人気ハードとなったニンテンドー3DSやニンテンドースイッチまでつながって一時代を築き上げたのではないかと考えると、少々残念に思われてなりません。

・ファイヤープロレスリングi

ファイプロシリーズのファンでも、この存在を知っている人は少ないのではないでしょうか。

この作品は携帯電話の「imode」機能を利用したゲームで、今のスマホゲームの感覚でファイプロを楽しむコンセプトの作品でした。
残念ながら短期間でサービス終了した作品で、詳細な情報を得ることはほぼできなくなっているですが、スーパーファミコン版のファイプロレベルのエディット機能を備え、携帯電話特有の通信機能で対戦できるものとなっていたようです。
そう考えると今のスマホゲームをいち早く先取りしたように思えますが、モバイル通信では現在でも5G回線で通信対戦がなんとか成立するレベルのため、当時のハード環境ではあまりにも早すぎた試みだったと言えるかもしれません。
実際、当時のシリーズで最先端のファイプロDでも専用サーバーにデータをアップロードしてオートバトルを観戦する程度しかできなかったため、「アイディアは良いが環境が追い付かない」といった状況だったのでしょう。
もっとも、不況にあえいでいた2000年代前半は何より利益優先で進んでいた時代だけに、いつ来るともしれない次世代携帯(スマホ)の登場まで待つ選択はあり得なかったと言えるでしょう。

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